映画の時間に包まれる場所──小豆島「二十四の瞳映画村」を訪ねて

 

瀬戸内の穏やかな海に浮かぶ島、小豆島。
オリーブやそうめん、醤油などで知られるこの島の南端、
岬のように海に突き出た場所に、「二十四の瞳映画村」はひっそりと佇んでいます。

ここは、壺井栄の小説『二十四の瞳』を原作にした映画のロケ地を再現したテーマパークであり、
訪れる人々に、昭和初期の日本の風景と心情を伝えてくれる場所です。

古い木造校舎、海辺の一本道、そして波の音。
まるで、時間が巻き戻されたような、不思議な感覚に包まれます。


目次

ノスタルジーに出会う旅

入口をくぐると、まず目に飛び込んでくるのは、
まるで昔話に出てきそうな、素朴であたたかな教室の風景。
木製の机と椅子、黒板、そして教壇の上に置かれたチョーク箱。

ふと窓から差し込む光が、埃を浮かび上がらせて、
あの頃の教室の匂いまでもが蘇ってくるような気がします。

誰もいないはずなのに、
今にも子どもたちの笑い声や、先生の呼びかけが聞こえてきそうな、
そんな錯覚にさえ陥るほど、空間そのものが語りかけてくるのです。

映画に出演した俳優たちのスチール写真や、
当時の撮影風景を記録した資料の展示も豊富で、
映画ファンはもちろん、知らずに訪れた人もその世界観に引き込まれます。

“記憶の中の日本”に触れるような、
どこか懐かしくて切ない時間が、ゆっくりと流れていきます。


瀬戸内の風景とともに

映画村を歩いていると、すぐ目の前には瀬戸内海の静かな水面。
青く穏やかな海は、まるで心の中まで洗い流してくれるかのようです。

白く小さな波が寄せては返す音、
遠くをゆっくりと進むフェリーの姿、
鳥たちが低く飛び交う空。

そんな一つひとつの風景に、日常では気づけない感情が呼び覚まされていきます。

道ばたには季節の草花が咲き、
地元のオリーブを使ったジェラートやカフェランチも楽しめる場所が点在しています。
古民家を改装したショップでは、懐かしい文房具やお土産を見つけることもでき、
まるで昭和の旅をしているようなひとときを味わえます。

映画の舞台を実際に歩くことで、
“あの時代を生きた誰か”の息づかいや想いに、そっと寄り添えるような気がしました。


記憶と心にふれる旅を、あなたにも

旅のかたちは人それぞれですが、
「二十四の瞳映画村」での時間は、
どこか心の奥を優しく撫でてくれるような体験でした。

観光名所を巡るだけでは得られない、
静かであたたかな感情の揺らぎ。

それは、まるで古いアルバムをめくっているときのような、
一枚一枚が大切な記憶として胸に残る旅でした。

もし、小豆島を訪れることがあれば、
ぜひこの静かな映画村を訪れてみてください。

海風に吹かれながら、木造校舎の廊下を歩き、
あの時代を想いながら、自分の記憶をたどってみる──

そんな“心の旅”が、
あなたにとってもかけがえのない時間になるかもしれません。

忙しい日常から少し離れて、
大切な何かをそっと思い出すための場所として、
「二十四の瞳映画村」は、静かにそこにあり続けています。

 

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